医学生におすすめなIT系国家資格3選

アイキャッチ画像(med-students-it-certifications)

医学部生活は6年もありますが、意識的に行動しないと医学以外の勉強を全くしないうちに卒業を迎えてしまいます。

私は医学生のうちから情報を学んでおくべきだと強く考えています。今後は医療の世界においても情報化が進んでいくものと考えられますが、「システムって何ですか。」「パソコン使えればいいんでしょ。」では、加速する世界から置いてけぼりをくらってしまうからです。

情報というと「プログラミング学習」を真っ先に思い浮かべる方もいるかもしれませんが、ほとんどの医学生にプログラミング学習は不要です。詳しくは下の記事に書いてあるのでぜひご覧ください。

※例外的にR言語はおすすめしています。

この記事ではITに関しての知識を幅広く学ぶために有用な、医学生におすすめのIT系国家資格を3つご紹介します。


勉強のために資格を取得するということ

世の中に資格は数多くあれど「この資格がないと法律上仕事ができない!」というような資格(業務独占資格)は、IT分野には存在しません。そのためこれから紹介するIT系資格を有していなくても、実務上は全く問題ありません。

また資格を有しているということで客観的に実力が証明される、という考え方もありますがIT系資格では必ずしもそうとは言えません。資格を持っていなくても優秀な方もいれば、資格はあるのに実務がさっぱりという方も当然いらっしゃいます。

しかしそれはあくまでもITを専門としている方々の中での話です。医師がIT系の資格を持っていれば、それだけで「一般人よりはIT知識のある人間」ということを客観的に証明することができます。また資格そのものよりも、資格を目標として勉強することでITに関する知識を幅広く身に着けることができるのです。

①基本情報技術者(FE)

IT技術者の登竜門として知られる資格で、IT企業に内定をもらった学生が就職までに取得を推奨されることもあります。「基本」情報技術者という名前の通り、ITに関する様々な問題が「広く浅く」出題されます。

ITというとプログラミングやセキュリティ、ネットワークといった分野をイメージするかもしれませんが、FE試験ではマネジメントや企業活動などの分野からも出題されます。そのため、そもそもITという分野がどのような広がりを持っているのか、全体像を把握する上で非常に有用な試験といえます。

私が友人から「ITについて学びたい」と相談を受けた際は、FEの勉強をお勧めすることも多いです。

試験の概要: 合格率は結構低い

毎年4月と10月に実施されます。合格率は25%前後とそれなりに低いです。医師国家試験(合格率90%)より3.6倍も高い倍率ですね。試験は午前と午後の2科目で、いずれも択一式です。

詳しい試験の情報と過去問題についてはこちらの情報処理推進機構(IPA)公式サイト(FE)をご覧ください。

対策のポイント: 過去問丸暗記で受かりはするが……

この後でご紹介する応用情報技術者(AP)もそうなのですが、いずれも資格を取るだけであれば過去問の丸暗記が最も効率的な学習法となります。

というのも(回によって変動しますが)毎回半分くらいは過去問と全く同じ問題が出題されるのです。合格点が6割前後なので過去問を確実に押さえたら、残り半分の問題を20%の正答率で解答できれば期待値的には合格点に達します。

ただし今回の目的は資格の取得ではなく、ITの知識を身に着けることでしたね。過去問演習と合わせて広くIT分野を学べるという点では、以下の書籍がおすすめです。

このシリーズは基本事項の解説・過去問演習のセットを分野ごとに進めていくという構成になっており、単なる過去問解答力ではなくITの基礎知識をしっかりと身に着けることができます。

ただIT系資格の資格対策本は世に数多くあるので、ぜひ大手の本屋さんなどで自分に合うものを探してみてください。その際は解説パート(教科書のような部分)が過去問とは独立して書かれているものを選ぶのがポイントです。


②応用情報技術者(AP)

FEの上位版資格が応用情報技術者(AP)です。後述する高度情報処理技術者試験の登竜門的な位置づけではあるようなのですが、連続したものではなく高度なジェネラリストという認識の方が適切なように私は思います。

FEが「広く浅く」であったのに対して、APは「広くやや深く」といった感じでしょうか。

試験の概要: 記述式あり

FEと同じく毎年4月と10月に実施されます。合格率は23%前後とこちらもそれなりに低いです。午前と午後の2科目という点も同じですが、午後の試験は記述式となります。

詳しい試験の情報と過去問題についてはこちらのIPA公式サイト(AP)をご覧ください。

対策のポイント: 記述式に耐えうるしっかりとした知識を

午前についてはFEと同じく過去問演習で何とかなりますが、午後の記述式試験についてはしっかりとした勉強が不可欠です。但し記述といっても論述ではないため、基本的な知識と日本語力があれば十分に合格が望める内容となっています。

勉強方法はFEと全く同じです。過去問演習を中心としつつ、各分野の知識を深めていきましょう。今回もおすすめの教科書は以下の「情報処理教科書シリーズ」です。

③システムアーキテクト(SA)

APのさらに上位には高度情報処理技術者が存在します。高度情報処理技術者試験は1つの試験ではなく、専門分野ごとに区分されています。APが「広くやや深く」であったのに対して、高度情報処理技術者は「狭く深く」という内容になっています。

私が高度情報処理技術者の区分の中からお勧めするのはシステムアーキテクト(SA)です。名前だけ聞いても良く分からないですよね。SA試験の対象者像というのがIPAの公式サイトにあるので引用させていただきました。

高度IT人材として確立した専門分野をもち、ITストラテジストによる提案を受けて、情報システム又は組込みシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、情報システムについては開発を主導する者

システムアーキテクト試験(SA) ~業務とITのグランドデザイナー~

何だかややこしいですが……要するにシステムの設計者(システムのアーキテクト)です笑

システムアーキテクトの勉強を進めていくと、「システムとは何か」や「システムはどのように構築するのか」ということを学ぶことができます。

どのような試験かについては実際の過去問を見ていただければ一目瞭然なので、1つ医学生にとって興味深い問題をご紹介しましょう。平成26年度秋季試験(10月)午後Iの問4では遠隔操作可能な手術支援システムの構築が問題として出されています。こちらのページの表から「システムアーキテクト・午後II・問題」にあるpdfファイルを見てみてください。

いかがでしょう。将来医師として、ITをどう活用してけば良いのかイメージが湧いてきませんか?

試験の概要: 論述が鬼門

SAの試験は高度区分というだけあり、FEやAPとは全く毛色が異なります。試験は年1回10月のみ、合格率は13%前後で一段と低いです。

試験科目は午前I・午前II・午後I・午後IIの4科目で、午前Iと午前IIが択一式、午後Iが記述式、午後IIが論述式です。

午前の部は区分によらず共通でそれほど難しくはないのですが、午後の部は区分ごとの専門的な内容が出題されるため難易度が跳ね上がります。また区分によっては(データベーススペシャリストなど)午後IIも記述式なのですが、システムアーキテクトでは論述式のため、高度区分の中でも比較的難しい区分といえます。

午後IIの論述試験ですが、自身の開発経験に基づいた回答が要求されるため、全くの無経験の方には非常に厳しい試験となります。そのためこの試験については、誰にでも受験をお勧めできるようなものではありません。しかし勉強する価値は十分にあると考えるので、ご紹介させていただきます

対策のポイント: 論述のネタを用意しておく

午後Iまでは専門性が深まっただけで、基本的な対策方法はAPとさほど変わりません。しかし論述問題については別途対策をしておく必要があります。

またまた「情報処理教科書シリーズ」のご紹介ですが、こちらの本では論述試験の具体的な書き方も細かく説明されているのでぜひ読んでみてください。

ちなみに私が受験した際(平成29年度秋季試験、医学部5年生の10月)は、総合病院における外来管理システム(架空)を話題に解答しました。受験時点で小規模な医療情報システムの開発経験はありましたが、それをそのまま書くわけにもいかないので、日ごろの病院実習で感じていた病院の不合理なシステムを改善するような情報システムを開発した体で作文しました。科ごとの診療体制の違いや病院特有の職種間連携などを考慮し、診療予約・電子問診などの機能をアレンジした覚えがあります(医療関連情報のデータベースを更新するために院内で開催される会議の頻度など、細かい話も詰めて考える必要があるので非常に面倒な試験でした)。

開発経験のない方は、日常で抱えている不満をネタに何か理想的なシステムを考えて試験に臨むことをお勧めいたします。

まとめ

この記事では基本情報技術者・応用情報技術者・システムアーキテクトの3つのIT系国家資格をご紹介しました。

医師とIT技術者の懸け橋としては、応用情報技術者があれば十分といえるでしょう。余力のある方はシステムアーキテクトについても勉強してみると、医療とITを融合したシステムについて理解が深まるかと思います。

それでは、ぜひ医学部生活の貴重な6年間を有効活用してくださいね。